EducationQualifications 高等教育と学位・資格研究会

TOPページ > EQ研|調査研究概要

EQ研|調査研究概要

研究計画概要

1.研究課題
非大学型高等教育と学位・資格制度に関する研究
文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(A)(課題番号:21243044)
(http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/21243044)

2.研究期間
2009年4 月~2013年3月

3.研究代表者
吉本 圭一(九州大学大学院人間環境学研究院 主幹教授)

4.研究組織 (調査研究組織参照)
研究分担者14名、連携研究者8名、国内研究協力者9名、海外研究協力者若干名

研究概要

背景

1970年代以後、新たな人材ニーズに応じて先進諸国で多様な「非大学型」高等教育機関(i)が発達してきたが、大学セクターと非大学型セクターとの制度的関係については各国が各様の課題を抱えている。この問題は、アカデミックな学位と職業資格の統合というかたちで集約的にあらわれ、人材の流動性確保や質保証への取組として、欧州統合以降のEU加盟諸国を中心に活発な議論がなされている。学位・資格制度を早くから確立してきたフランスなどの例外をのぞき、こうした枠組に乏しかった欧州諸国では、新たな学位・資格制度の枠組づくりが急速に進行しており、またそれらが欧州にとどまらずグローバル・スタンダードへと展開し始めている。

しかしながら翻ってわが国の状況をみると、大学と「非大学型」高等教育機関との制度的関係について検討がなされるどころか、そもそも「非大学型」高等教育機関に関する研究さえ、十分に蓄積されていない。

わが国の主要な「非大学型」高等教育機関としては、短期大学、高等専門学校、専門学校が存在する。今日、義務教育修了者(1,188,033人)の97.9%が高校等に進学している。また、その中で5年制の高等専門学校(64校)へ進学する者が0.9%である。高校卒業者の進路としては、47.2%が大学(773校)へ、6.2%が短期大学(406校)へ、そして14.7%が専門学校(3,350校)へ、それぞれ進学し、残りの18.1%が就職の道を選んでいる。つまり、同年齢集団のおよそ4分の1にあたる青少年が「非大学型」高等教育機関に進学しており、学校数においては大学の約5倍にあたる数の「非大学型」高等教育機関が存在しているのである。

このような状況にもかかわらず、わが国における「非大学型」高等教育機関に関する研究の蓄積は、そう多くない。短大ではいくつかの総合的な研究があり(ii)、編入学など「非大学型」機関に固有の課題解明も進められている(iii)が、大学に関する実証的研究蓄積とは大きな落差がある。専門学校および高等専門学校に関しては、いくつかの実証的研究が散見される程度である(iv)。そして、そうした「非大学型」高等教育の質的な向上に関わって、現在欧州諸国で盛んに議論されているようなアカデミックな資格、すなわち学位と職業資格をカバーするような国家的な学位・資格枠組についての議論は、わが国では依然として未成熟なままである。

わが国では大学、「非大学型」高等教育機関ともに、主として18~20歳の青年期の教育を担っており、若者の社会的自立・移行への支援機能が求められている(v)。両セクターを対比させてみれば、大学では学術空間での社会的自立の自己探究という方法をとり、「非大学型」高等教育では職業的な空間での社会的自立の契機、言い換えると「しつけ」機能(vi)が重視されるはずである。だが、「秘書(ビジネス実務)」あるいは「看護」といったいくつかの領域においては、大学を含めた複数の学校種が同種の人材養成に関わるという重複・競合関係が発生しており(vii)、とりわけ専門学校の学校教育法上の位置づけ(いわゆる非一条校問題)が課題となっている。中央教育審議会特別部会審議経過報告(viii)で提案されたいわゆる「新しい学校種」とも関連して、現在その教育の輪郭付けが急がれている。ただし、「非大学型」高等教育プログラムそのものは、高等教育の一般モデルである大学と比べたとき、その異質さや柔軟さ、多様さに比例して不可視的なものとなるため、「非大学型」高等教育プログラム内部における特質の明確化・差異化が必要であると同時に、大学との共通枠組での比較研究が必要となっているのである。

大学とこれら「非大学型」高等教育機関との関係は高等教育研究の重要な研究テーマでありながら、わが国では「非大学型」高等教育機関に関する研究が未成熟であり、そのことが学術型教育と職業型教育の学位・資格体系化に向けての理論枠組の形成を阻害している。総合的に「非大学型」高等教育を究明し学位・資格制度の体系化を論じることによって初めて、大学教育の学術的教育の特質の理解を深めることができるのであり、さらには大学と「非大学型」両者に共通する高等教育におけるキャリア教育をめぐる理論の深化に貢献することができるのである。その意味では、本研究課題は、「非大学型」高等教育を通して大学論、高等教育論全体の発展に寄与することを究極的な目的としている。

具体の解明すべき課題として、「非大学型」高等教育である短期大学・専門学校・高等専門学校の教育プログラムの特質について、1) 統制と調整の主体: カリキュラムの目的・内容・方法への関係者の関与・統制のあり方、2) 教育の目的・目標: 教育の成果としての進路・キャリア形成、3) 教育の方法: 教育プログラム運営に関わる教職員の資質や志向性、教授法の3つの視座から学校種横断的に調査・研究する。これら3つの視座を、対応する3班で分担する(別紙1参照)。また、「非大学型」高等教育機関の提供する学位・資格と大学中心の学位制度とを関連づけた、高等教育全体における学位・資格枠組みを探究する。

i 「非大学型」高等教育機関という言い方は、厳密には、大学以外の教育機関が高等教育セクターに位置づけられると認識されたときに初めて成立する。だが、例えばオーストラリアでは、高等教育に含まれるのは大学だけであり、TAFE(Technical and Further Education)などで提供される中等教育修了者を対象にした教育プログラムを広義の高等教育としての「第三段階教育tertiary education」と括っている。他方、日本の短期大学や韓国専門大学のように、制度的には広義に「大学」という枠組みの中に入っているものであっても、修業年限、教育の目的・方法等において狭義の「大学」とは明確に区別されているセクターもある。そこで本研究では、ISCED5bを主たる対象としつつ、国内的な認識として大学以外の第三段階教育と位置づけられるもの、広義の大学と位置づけられるものを含めて、日本の「非大学型」高等教育の比較考察にとって意味ある範囲で、研究対象に含めるものとする。
ii 代表的なものに、舘昭編(2001)『短大からコミュニティカレッジへ』東信堂、吉本圭一編(2008)『短期大学ステークホルダー調査ハンドブック』短期大学基準協会 など。
iii 吉川裕美子、濱中義隆、林未央、小林雅之(2004)「学生の流動化と学士課程教育-全国大学調査にみる編入学,単位認定,学生交流と支援体制の実態-」、『学位研究』第18号、3-104頁。ならびに濱中義隆(2008)「『学生の流動化』と進路形成」、『高等教育研究』第11集、107-126頁。
iv 吉本圭一(2008)「職業教育体系構築が意味するもの」専修学校教育振興会『専修教育』No.28、17-28頁、吉本圭一(2009)「高等職業教育の体系化と専門学校」、『大学論集』第40集、201-215頁、塚原修一(編)(2008)『高等教育市場の国際化』玉川大学出版部、財団法人政策科学研究所(2004)『専門学校等における高度専門人材養成』平成15年度経済産業省委託調査、新谷康浩(1998)「高専卒業者の職業キャリアと職業能力形成」日本労働研究機構『高専卒業者のキャリアと高専教育』。
v 吉本(2008)および新谷康浩(2009)「労働の場からみたトランジッションの実態」古賀正義編『リスク回避の教育に挑む‐負け組脱出のためのトランジッション戦略』東洋館出版社(印刷中)
vi 吉本圭一(2003)「高等教育の多様化と専門学校」『高等教育研究』第5集、83-103頁。
vii 例えば、江藤智佐子(2008)「秘書教育におけるインターンシップ-短大「企業研修」の歴史的展開」、日本インターンシップ学会『インターンシップ研究年報』第11号、9-15頁、および立石和子(2008)「看護養成課程による教育の比較・分析」九州大学教育社会学研究室『九州大学教育社会学研究集録』、第9号、3-17頁。
viii 文部科学省中央教育審議会(2009)「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(審議経過報告)」

研究課題

1) 日本の高等教育システムにおいて、大学と「非大学型」高等教育機関がそれぞれどのような機能的な分担関係を有しているのか、あるいは重複・競合関係にあるのか。また、それは将来的には、多くの機能を多様な大学が担うという単一セクターモデルに収斂していくのか、大学セクター内部の種別化・機能分化ないしは「非大学型」セクターの発展による複線型機能的分化システムの確立に向かうのか、あるいは現行の複数セクターの重複・競合関係がより広がっていくのかという可能性について、国内的な動向分析、国際的な比較的考察を通して、政策科学的な検討を行う。

2) 「非大学型」高等教育機関における専門職業教育(professional/vocational education)は、以下のような観点において、どのような特性を持つのか。特に大学と比較したときの固有の特性はどのようなものか。また、各種の「非大学型」高等教育機関の間に、共通する特性と異なる特性は何か。

[調整・統制の主体]
> 各教育機関あるいは教育スタッフ
> 政府
> 市場あるいは外部ステークホルダー

[教育の目的]
> 進路・職業キャリアと育成目標としてのコンピテンシー

[教育の方法]
> 専門的な技能習得の強調-省察による知的操作の強調
> 実践・経験をベースにした学習-理論的体系的な知識・法則の学習
> 産業界やステークホルダーの学習プログラムへの関与-学術組織の自律性
> 教員の資質(実務専門的卓越性、学術専門的卓越性、教育技術的な適性)

3) 「非大学型」高等教育機関を発展させるための国家的学位・資格枠組を構築する上でキーとなるコンセプトは何か。
・社会的認知の対等性(Parity of Esteem)
・学習の柔軟な展開のための相互浸透性(permeability)
・機能的な分担・連携のためのパートナーシップ(Partnership)

4) 海外事例との比較的考察。
対象国
> イギリス、フランス、ドイツ、等の欧州諸国
> 韓国、中国、オーストラリア、アメリカ

お問い合わせ
〒812-8581
福岡市東区箱崎6-19-1
九州大学大学院人間環境学研究院
教育社会学研究室内
研究会事務局
Tel&Fax 092-642-3125
E-mail eduqual22@gmail.com

Copyright © 2010 Education and Qualifications All Rights Reserved