1. 事業の目的・概要
本事業では、世界的に普及しつつある職業教育・高等教育資格枠組みについて、海外教育研究機関等と連携して調査研究し、特に外部関係者を含めた職業基準策定モデルを検討することを通して、国境なく人材を受入れ送り出すための職業・高等教育資格枠組みの日本的可能性を検討することが目的である。
特に、(1)後期中等教育から高等教育/第三段階教育までの各水準における教育プログラムの系統化、(2)モジュール構造によるリカレント学習促進のための適切な学習時間モデルの検討、(3)各教育段階での学校種横断的、 専門分野横断的な共通要素抽出。
2. 事業の実施意義や必要性について
① 当該分野における人材需要等の状況、それを踏まえた事業の実施意義
当該分野における人材需要等の状況
グローバルな中核人材養成のための教育・訓練の統合的な取り組みが求められている中で、既存の職業・高等教育資格枠組みにおいては、(1)後期中等教育から高等教育/第三段階教育までの各段階における教育プログラムの系統化、(2)各教育段階での学校種横断的、専門分野横断的な共通要素の解明が明らかになっていない状況にある。
事業の実施意義
本事業では、世界各国での実践的な職業教育のカリキュラム編成、単位の取り扱い、成績評価の方法などの、職業教育と高等教育の質保証と向上のための制度としてのグッドプラクティスを収集・関係機関へ提供し、産業界等を含めた国際的な連携による職業教育・高等教育資格枠組みの構築を目指す。
海外での資格枠組みのおける古典的なモデルを持つフランス、ドイツ、近年の展開の顕著なアングロサクソン圏の英国、オーストラリア、職業学位に関して注目されるフィンランド、EUの職業教育訓練研究センター(CEDEFOP)、アジア圏における新たに資格枠組みを導入しつつある韓国をはじめとして、資格枠組みを通した質保証に高い関心をもつインドネシア、タイ、台湾、中国、そして異なるアプローチながら全国職業技能スタンダードの普及に取り組む米国を選定して国家的職業資格、職業教育・高等教育資格枠組みに係る制度と政策動向を調査することは日本版資格枠組みを検討するうえでの基礎資料づくりとしても意義のあることである。
また、海外機関からの研究会への招聘、コンソーシアムとの連動して研究会や国際セミナーの開催、また観光、ビジネス、食と調理・栄養、介護などの職域プロジェクトと連携しながら、学位と資格枠組みを検討することは大変意義ある活動である。日本の制度における、資格制度を、評価の対等性、浸透性、移行、それらを促進する連携の観点から、国境なく人材を受入れ送り出す制度に近い領域遠い領域を明らかにし、職業・高等教育資格枠組みの日本的可能性を検討することを目指す。
② 取組が求められている状況、本事業により推進する必要性
取組が求められている状況
中教審キャリア教育・職業教育特別分科会で指摘されるように、わが国の職業教育・高等教育の現状においては、実践的・専門的・国際的な質の保証や相互交流などの枠組みが十分に発達しているとは言えない。これは日本的経営モデルが規範的に職業への円滑な移行システムを支えていた時代であれば有効であると思われるが、それらが規範的にも機能しなくなり、学習成果への到達目標が強調なされる中、教育機関がコンピテンシー等のアウトカム基準によるカリキュラム開発を進めていく上で、政策的にも実践的にも、現状の革新を促す新しい枠組みが必要とされている。
本事業により推進する必要性
グローバル専門人材養成における職業教育・高等教育をとらえ直し、非学位課程、履修証明、単位認定など、学校教育における学修成果の評価方法を効果的に活用することで、学習者の意欲の向上とキャリア形成上の様々な人材養成力を高めるように努める。また、海外の資格枠組みをもとに、アウトカム・コンピテンシーベースのカリキュラムを策定し、それを現状のカリキュラムと比較することで、国際的通用性を検討する有意義な取り組みとなる。特に、本研究開発組織は、九州大学の「高等教育と学位資格研究会」がこの研究課題に長く取り組んできた成果をふまえて、多様な学校種の関係者が参画するコンソーシアムの下に展開することで、実践的にも学術的にも価値の高い取り組みとなることが期待される。