ご挨拶
今日わが国において大学・短大・専門学校などの高等教育=第三段階教育(Tertiary Education)は、若者の学校から社会・職業への移行における中核的な役割を担っています。これからの知識基盤社会においては、第三段階教育における、入職前の学校段階での学習機会とともに、職業経験をもつ社会人の学び直しの機会が注目されます。特に、各機関が多様な人材に期待するさまざまのステークホルダーとの対話を通して、適切な人材養成目的・学修成果目標を設定し、モジュール構造化を含めたカリキュラムの革新を進めていくことが求められています。
本研究会は、ユニバーサル化・多様化の進む第三段階教育において、ラーニングアウトカムにかかる学位と職業資格の在り方の実証的研究を課題としています。四年制大学の場合に、ラーニングアウトカム議論は活発に行われながらも、実際の教育課程への組込にはまだ長い道のりがあるように見えます。専門学校、短期大学など、人材養成への焦点を明確にもつ学校種や専門分野においても、その特色であるキャリア教育・職業教育の質保証はまだまだ、未開拓の領域です。そこで、カリキュラムの目的・方法論・統制のあり方、教職員の職能・学識と活動、志向性、卒業者の職業への移行とキャリア形成に関して、実証的な調査を通して、第三段階教育の探究をしていきます。
本研究会では、教育社会学・高等教育分野等の研究者とともに、第三段階教育の現場の教職員、関連団体等の関係者が多数参加し、上記課題にかかわる各種研究プロジェクトを実施しています。現在進行中のプロジェクトとして、2013年度からの「キャリア教育・職業教育による高等教育の機能的分化と質保証枠組みに関する研究」(科研費・基盤A、課題番号25245077 )があり、九州大学が受託した「平成25年度文部科学省・成長分野等における中核的専門人材養成に関する戦略的推進事業」の「グローバル専門人材」分野のコンソーシアム・職域プロジェクトがあります。また、短期大学コンソーシアム九州はひきつづき重要な研究交流パートナーであり、「非大学型高等教育と学位・資格制度に関する研究」(科研費・基盤A、課題番号21243044:2009-2012年度)や、全国専修学校各種学校総連合会委託「専門学校教育研究会」の調査研究(2008-2010年度)などの成果も引継ぎなら、実践的でかつ学術的な研究の推進を目指しています。
このホームページでは、本研究の活動と成果についての情報をひろく公開していきます。本課題に関心を持つ多くの方々との交流を進めていきたいと思いますので、どうぞ多くの方々に当サイトをご活用いただきたく、よろしくお願い申し上げます。
2020年10月
研究会代表 吉本 圭一(滋慶医療科学大学・教授)