事業概要

1. 事業の目的・概要

 地域における中小企業等のニーズを捉え、専門分野ごとのグローバル対応性を高めるために、学び直しが可能な積み上げ方式の学習ユニットと経験による学習を組み合わせたモジュール型のモデルプログラムの開発・検討、試行実施が目的である。主に①社会人等が学びやすいモジュール型の学習支援システムの検討、②各分野における職業実践的なモデルプログラムの開発・検討、試行実施とその評価の検討の2つの事業を行う。

2. 事業の実施意義や必要性について

① 当該分野における人材需要等の状況、それを踏まえた事業の実施意義

【当該分野における人材需要等の状況】

 今日成長著しいアジア市場等における企業等の海外展開はもとより、国内市場における国際次元の展開はその速度を増しており、これらに対応する広範囲の分野でグローバルな対応能力をもった中核的専門人材需要は飛躍的に拡大している。野村総合研究所(2010)『新成長戦略への提言』によればコスモポリタンと呼ばれるグローバル人材の需要は5%あるが、供給される人材は1%に留まっているのが現状である。また、グローバル人材という国際次元に特化した専門性だけではなく、あらゆる範囲の企業が国内外でグローバルなビジネス展開を進めつつあり、日本の産業が生み出した価値を国際的に拡げていくために、全ての分野であらゆる人々が国際的な対応力を必要としており、とりわけ中核的専門人材においては、語学、異文化などとともに、技術移転やビジネスに関わる国際法規、知財等への理解が不可欠となっている。
 地域の中小企業等のニーズへ対応するブリッジ型人材の育成が急務であり、観光、食・栄養、介護・福祉、経営・ビジネスなどの成長分野等の産業で活躍できる中核的専門人材育成に重点が置かれていく必要がある。しかしながら、現在のグローバル人材育成への教育機関や政策のアプローチとしては、若年期のグローバル体験の提供や優秀な留学生を日本企業に就労支援することなどに焦点があてられており、社会全体としてのグローバル化に向けて適切な人材養成の量も質も伴っていないのが実情である。
 大学・専門学校等の高等教育機関において、若年者の正規課程だけでなく、社会人にも新たな知識・技術・技能等を学ぶための非正規課程の整備が求められており、それらをさらに履修証明などによる単位積み上げ型の正規課程の一部モジュールとして活用していく体制が期待されている。これらの学び直しプログラムへのニーズは、新たな労働力の需要創出だけでなく、潜在労働力として期待できる女性労働力の活用等の観点からも期待されるものである。

【それを踏まえた事業の実施意義】

本事業は、グローバル人材養成に向けて学び直しが可能なリカレントなモジュールを調査検討することで、キャリアアップ等を対象とした学び直しの機会の提供、新たな雇用創出のための教育プログラムの開発を行うものである。これは、成長分野等における中核的専門人材養成として、留学生等のインバウンドな労働需要に対応するだけでなく、海外展開を視野に入れた企業で活躍するためのアウトバウンドな人材養成にも寄与するものである。

②取組が求められている状況、本事業により推進する必要性

【取組が求められている状況】

 今日の日本社会が全体としてグローバル化していく段階においては、海外進出企業の現地管理部門のトップ人材だけでなく、ビジネスのあらゆる場面においてまた国内外での国際的次元が拡大している。そのため、こうした対応が組織的に十分行なわれてこなかった中小企業等においても、採用のニーズが高いアジア諸国等の外国人留学生への支援にとどまらず、グローバル化対応に向けて必要な、日本人従業員や企業組織全体に、それぞれの業務専門性を基礎としながら国際的な対応能力を身に付けることが求められている。また、語学力・コミュニケーション能力だけでなく、国内外の社会・経済・文化への理解、特にビジネスに関わる「知財等」の国際法規などに精通するための知識・技能修得できる学習ユニット等の在り方に関する検討も求められている。

【本事業を推進する必要性】

 インバウンドな留学生支援モジュールについては既に多くの研究開発から実践がなされているところであるが、アウトバウンドな海外派遣人材のリカレント学習のためモジュール開発や、国内市場における国際次元への対応のための企業組織文化革新のための学習モジュールの開発はまだ十分に進んでいない。そこで本事業では、社会人の学び直しにも対応できる「リカレント学習のためのモジュール開発」のモデルを探索するために、まずインバウンドモジュールの再評価を行い、次にアウトバウンドな海外派遣人材、地域におけるグローバル化対応人材のためのモジュール開発を検討していく。
これはグローバル人材の活用という点において、また成長産業への労働力シフトを促進するとともに、「キャリア転換型」の人材育成を検討する上で、職業実践的なモデルプログラム開発につながる取組として必要である。
 また、これらのグローバル人材育成のためには各分野の特性を踏まえた基礎的な知的財産を理解し、推進できるモジュールが必要である。成長分野等においてイノベーションの創出を図っていくためには、知的財産を創造し、保護し、活用する人材や、技術と経営の双方を理解し研究開発を効果的に市場価値に結実させる人材などの育成が求められている。特に、IT・情報、クリエイティブ分野等のコンテンツ系やビジネスモデルなどの経営・ビジネス系等におけるグローバル化に対応するためには、専門的な知識、技術だけでなく、それらを有効に活用し、保護するための知的財産に関する知識が不可欠である。