グローバル人材養成に向けてのリカレントなモジュール学習プロジェクト

平成27年度「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」事業

高等教育と学位・資格研究会

事業概要

1. 事業の目的・概要

九州各地域の多様な産官学関係者、先行専門分野別コンソーシアム関係者等による産官学コンソーシアムの実質化を図り、①学校段階縦断的、学校種横断的、専門分野横断的な、グロ-バル人材ニーズと必要な諸能力についての協議、職域プロジェクトと連携して②国際的通用性をもつ職業・高等教育資格枠組みの可能性探究、③双方向統合型国際ネットワークによる学習プログラム開発、④社会人の学び直しを促す学習ユニット積上げ型プログラム開発を目的とする。

2. 事業の実施意義や必要性について

 当該分野における人材需要等の状況、それを踏まえた事業の実施意義
社会全体のグローバル化の促進と、グローバル化に対応できる人材養成として、一部の海外進出企業等の現地派遣トップ人材にとどまらず、国内でグローバル事業展開を進める中小企業等をふくめた分厚い中核的専門人材層のグローバル化が求められる、すなわち、社会全体として、相乗的に拡大する国際場面の拡大に対応できるグローバル専門的人材育成が求められている。
グローバルな中核的専門人材には、英語等を含む外国語習得にとどまらず、日本や諸外国の文化・社会への理解や異文化環境への対応のための知識・技能、技術移転・国際ビジネスなど国際化に関わる「知財」にかかる知識・技能、日本の強みである生産管理工程などのノウハウなど、多様な能力を組み合わせて獲得していく必要があり、またこれらは、経験によってそれらを活用しうるコンピテンシーとして獲得される必要があり、ワークショップ・インターンシップ・海外派遣等の経験による学習が組み合わせられる必要がある。

 それぞれの成長分野等において各レベルの中核的専門人材に求められるグローバル化対応のための諸能力は、すでに、平成23年度からの「成長分野等における中核的専門人材育成」事業に係る専門各分野における、各人材の能力コンピテンシーのレベルと人材規模ボリューム、それらの育成のための職業教育プログラムについての検討の成果の中にもそれぞれ重要なコンピテンシー要素として、つまり「グローバル」次元だけの専門性による人材ではなく、それぞれの職業専門性を持ち、専門に応じたグローバル要素を確実に備えた人材ということが明示的・暗示的に表現されてきている。しかしながら、それらを総合し、明示的に体系的に検討する必要がある。すなわち、これらをそれぞれの分野・レベルにおける人材養成のための不可欠のモジュールとして、また当該分野・レベルの専門人材やそうした人材を抱える中小企業等が、多様な学び直し機会を活用して能力開発に取り組む社会人の学習を支援するための、グローバル専門人材育成の単位積み上げ学習型の体系的なモデル開発が必要となっている。

 また、そうした要請は、日本の教育・訓練制度全体として求められている職業資格・教育資格の国際的通用性の拡大への課題でもある。現在の日本の職業・教育資格を相互に比較検討し、日本の生涯学習における職業教育体系の整備についての構想をし、そのための政策課題要素を包括的に吟味していくための政策科学的な検討が不可欠である。その際に、海外において展開する職業教育・高等教育資格枠組みを検討し、学術的な取組に焦点をあてたプログラムと職業的な取組に焦点をあてたプログラムとが相互にどう位置づけられているのか、その位置づけ方とその適用について、評価の平等性、プログラム相互の連続性・浸透性などの関係性、プログラム外でのインフォーマル・ノンフォーマル学習を含めた学習成果を適切に位置づけることで学習者のリカレントな学習とその発展可能性を奨励する方法論、これらの体系性を確立するための連携の枠組みの各観点から検討していくことが必要である(吉本1996「学校教育・職業教育・職業訓練の体系化」、Yoshimoto & Inenaga2010 “Permeability in Japanese Education System”など参照)。

 さらに、こうして職業・資格枠組みを構築する取組は、学術的かつ政策科学的な課題探究を進めることになるだけではなく、グローバル化に応じる実践的な課題として、リカレントな学び直しのための適切な水準(レベル)と学習量(ボリューム)をもったモジュール開発を推進していくことにつながる。リカレント学習の社会ニーズに対して、各段階の教育機関の各分野・レベルにおいて、正規課程の学位プログラムにうまく調和する、正規課程・非正規課程の単位積み上げ型学習が統合的に展開できるのかどうか、実証していく必要がある。さらに、グローバルな資質育成のための教育方法論として、海外の職業教育機関やその質保証・調査研究機関・団体等と、密接な連携のもとで確かな双方向性をもち、インバウンド・アウトバウンドの統合的な教育のデリバリーを行う先導的なモデル開発が必要となっている。

3. 事業の成果目標

 期待される活動指標(アウトプット)・成果目標及び成果実績(アウトカム)
 目標として、3分科会において以下の 通り活動目標を設定する。

① 企画運営委員会

 コンソーシアム全体の円滑な運営が活動目標となる。研究協議会を開催し、コンソーシアムおよびプロジェクトの運営の基本方針を決定し、各種の活動を企画し、個別の運営課題を調整する。このために、分野別コンソーシアムとの十分な連携協議を行い、中核的専門人材育成事業の17の専門分野の進捗についての動向を把握し、またその基本的枠組みについて調査し、事業における統合性についての連携協議を行う。さらに、分科会およびプロジェクトとの調整のため、分科会と関連プロジェクトの進捗を把握し、コンソーシアムとしての統合性を調整する。

② 分野横断的浸透性開発分科会

 「九州発グローバルネットワーク」を実質化すべく、4地域5拠点(福岡・佐賀2拠点、佐世保・諫早・島原1拠点、宮崎1拠点、鹿児島1拠点)による2つの職域プロジェクト(「グローバルモジュールプロジェクト」「双方向性統合プロジェクト」)と連動し、国内調査として、平成23・24年度からの先行専門分野別コンソーシアムの参加機関へのアンケート調査、代表機関への訪問調査を行い、その研究成果を分析し、実践的な職業教育のカリキュラム編成、単位の取り扱い、成績評価の方法などについて共通要素と特殊的要素を分析する。また、研究会を開催し、分野別コンソーシアム関係者とプロジェクト関係者を招聘して研究会を開催する。

③ 質保証の枠組み検討分科会

 産業界や資格発行関連の団体・質保証機関へのヒアリング調査を行い、また分科会の調査結果を踏まえて、職業・高等教育領域における資格発行・質保証機関へのヒアリング調査を行う。本事業において重要な海外連携機関である豪州のオーストラリア職業教育研究センター(NCVER)との交流協定締結、豪州における資格枠組み(AQF)と、産業別技能委員会(ISC)による「訓練パッケージ」を参照しつつ編成されるオーストラリアの職業教育の国際通用性についての調査を実施する。また、研究会 プロジェクト関係者を招聘して研究会を開催するので、それらの活動の計画通りの実施を目標とする。

 これらの活動目標に応じた成果目標および成果実績(アウトカムとして)として、①企画運営委員会では、コンソーシアムの内部での分科会間、プロジェクト間、また4地域間でのネットワック間での課題共有である。また、事業のハイライトとなる年度末の国際セミナー・ワークショップにおいての、参加者数および、そこでの課題意識の共有が端的な成果目標となる。また、②分野横断的浸透性開発分科会では、2つの職域プロジェクトをもとに取り組まれたそれぞれの専門分野5拠点での活動のグローバルモデルの整合性・調和性が重要な成果目標であるが、同時に単純に共通化だけで評価するのではなく、成長分野の特長による固有性の解明もまた重要な成果目標指標となる。③質保証の枠組み検討分科会では、海外の多用な学位資格枠組み、職業資格基準等、高等教育・職業教育の国際的通用性に係る政策動向が急速に展開していることから、これらを如何にタイムリーに、かつ包括的に把握できたのかどうか、より日本に適用可能性の高いモデルを検討できたかどうかが重要な成果目標指標である。